最終更新:2011年3月11日

「ふるい下米」国会質問ふう質問書 今野茂樹

 大分県農協がJAS法違反に問われた事件。これがいかに滑稽な事件か、下の質問書を読んでいただければ分かると思います。


 米のJAS表示についてお伺いいたします。
 「特定米穀」というお米をご存じでしょうか。95年に廃止された旧食糧管理法では、「くず米、砕米その他農林水産大臣の指定する米穀」と定義されていました。その主な用途はセンベイやミソなどの加工用原料でした。
 ところがなぜか、現行の食糧法には特定米穀の定義がございません。くず米は一般米と同じ「米穀」となり、表示上の区別がなくなりました。これから申し上げるおかしなことの全ては、ここが始まりといえるかもしれません。

質問1
 先ず初めにお話ししたいことは、区別されなくなったくず米は今、どのように流通しているかという点です。一般米と同じ扱いが受けられるようになったくず米は堂々と「複数原料米・国内産」と、正規のJAS表示ができますので、消費者はくず米が混じったお米を知らずに買っているわけです。
 くず米が混じった米は炊くとベチャッとして美味しくありません。こうして消費者が知らないうちに混ぜられる、いわゆる特定米穀は年間20〜30万トンと推計され、米余りや米価下落の一因になっていると指摘する研究者もおります。

 ここで先ず、一般米とくず米、つまり特定米穀は区別する必要がないのか。農林水産大臣にお聞きいたします。

質問2
 JAS法には「複数原料米・国内産」という表示が定められていますが、極一部の国民にとってはとても重宝な制度であるようです。例えば、くず米や古米のような品質の劣る米を混ぜて販売しても、それが国内産であることが事実ならば偽装表示にはあたりません。ましてや、くず米を使用しています、なんてことを消費者には口が裂けても知らせる義務は全くないのですから。
 それにもし、3年前の古々々米が手元にあったとして、それが農産物検査法に基づいて検査されたお米であれば、「複数原料米・○○県産・コシヒカリ」などと任意に表示しつつ、都合の悪い産年は書かずに販売する、なんてことも全然OKなのですね。
 こんなふうに、品質の悪い安い米を混ぜて高く売る極一部の販売業者さんにとってはなんと都合の良いJAS制度でしょうか。

 そこでお伺いいたします。このJAS法に基づく「複数原料米」表示は消費者にとってもプラスだ、という点がもしあれば、消費者庁長官、お教え下さい。

質問3
 一方、消費者は、なんというお米で(品種)、どこで(産地)、いつとれたか(産年)といった基本的な情報はやはり知りたいものです。ところが、たとえそれが事実であっても表示することを禁止されている米があります。それもやはり「複数原料米」でした。
 どういうことかと申しますと。産地・産年・品種。この3つで「3点セット表示」と呼ばれていますが、お米に3点セット表示をするためには、昭和26年に制定された農産物検査法に基づいて検査を受けた米に限られます。ですが、検査を受けるかどうかは任意なので、当然検査を受けない米「未検査米」というのもあるわけです。制度で認めているにもかかわらず、検査を受けていないことを理由に産地や産年、品種名を表示することを禁止しているのでございます。
 その結果、消費者は買ったお米がなんという品種か、どこ県産かを知ることができない、という奇妙なことが起こります。
 つまり、「複数原料米」表示はくず米や古米を混ぜても消費者には分からず、知りたい産地や産年、品種も知ることができない「ブラックボックス」なわけです。
 こういった現状を変えようと、消費者団体から未検査米を含む流通する全てのお米に3点セット表示をして欲しい、くず米が混じっているかどうかを見分けられる表示にして欲しいという要望が消費者庁に寄せられまして、これは至極当然な要望ではないかと考えます。
 複数原料の内訳表示を販売業者の任意とせず、また未検査米の3点セット表示を禁止せず、内訳を正しく表示し、消費者の判断に資する情報提供が必要ではないかと考えます。

 そこで消費者庁長官にお伺いいたします。おそらく今後流通実態を調べてご検討いただけるものと承知いたしておりますが、消費者利益を守る役所として、どういったあり方が望ましいと考えておられるか、見解をお伺いいたします。

質問4
 おかしなことは、まだまだ御座います。JAS法は実に“複雑怪奇”なのですね。
 先ほど申し上げたように、従来、農産物検査法に基づく検査を受けていない未検査米には3点セット表示ができませんでした。そこで昨年6月18日、次のような閣議決定がなされました。
 「米の産年・品種について、農産物検査法に基づく検査証明書以外の方法により証明を行うことができれば、表示を可能とするよう、消費者などの意見を広く聴きつつ、検討を行い、結論を得る。」
 というものです。
 そして今般、消費者庁はパブリックコメントを経て、本年7月に完全施行される「米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律」(通称、米トレーサビリティ法)で消費者への産地情報伝達が義務化されるのに伴い、その産地情報を産地表示の根拠とするべく、「玄米及び精米品質表示基準」の改正案を諮問しました。(2月18日現在、諮問案は食品表示部会長預かりで保留中)

 ここでおかしいと感ずるのは、あらゆる農産物の中で唯一、スーパーなどで販売される包装容器入り精米のみが表示に第三者の証明を必要としている点です。
 他の農産物ではリンゴに「青森県産・ふじ」と表示したり、「高知特産・土佐文旦」と表示することは、それが事実であればJAS法違反にはなりませんし、そもそもこれらには国が関与する検査制度がございません。
 何よりおかしいのは、3点セット表示が禁止されているはずの未検査米であっても業務用に使う場合には産地や品種名をうたうことができる、という理解し難いJAS基準です。消費者向けには表示を禁止し、業務用であれば表示しても良いということです。

 添付資料をご覧いただきたいと存じます。昨年1月、未検査米に品種名を表示したとしてJAS法違反に問われた企業がございます。この企業は虚偽表示で摘発されたのではなく、未検査米に実際の品種名を表示したことが摘発の理由です。事実を表示したことが罪になったわけです。この場合でも、スーパーに卸さずに業務用に販売すれば摘発されることがなかったはずです。これはJAS表示基準の整合性のなさが招いた事例であります。

 内閣が未検査米に産年・品種を表示できるように閣議決定し、消費者庁が改正案を諮問する以前から、実は未検査米でも産地や品種名をうたって販売できていたという事実。その一方で事実を表示した罪で摘発されるというのは、滑稽としかいいようがございません。
 整合性がないことを知りながら改善を図ることをせず、諮問案を作成する役所に対しては強い疑念と憤りを感じます。

 そこで消費者庁長官にお伺いいたします。あらゆる農産物の中で唯一米だけ、しかも、包装容器入り精米のみが表示に第三者の証明を必要とし、その証明のために1万数千人に上る民間検査員の方々(大半が農協職員や流通業者の従業員)がいらっしゃいます。この検査員の方々の証明が不可欠な特別な事情というのはございますか。
 また、今後、米トレーサビリティ法を産地情報の伝達義務化以外に、産年・品種名も伝達するように見直しをすることで、未検査米を含む流通する全ての米に3点セット表示が可能になると考えられますが、この考え方に不都合な点はございますか。

 以上で質問を終わらせていただきます。

(2011.3.11)


「特定米穀」は「米穀」に含まれる

Q 特定米穀(くず米)については、改正法による改正前の食糧法では計画外としての扱いですが、改正法による改正後の食糧法においては、届出の対象米穀となるのでしょうか。

A 特定米穀の定義は食糧管理法(昭和17年法律第40号)においては、「くず米、砕米その他農林水産大臣の指定する米穀」と定義されていましたが、改正法の改正後の食糧法に置いてはこのような定義が定められていないことから「米穀」に含まれるものと解します。
   出典:平成16年3月 米穀販売業者 新制度移行Q&A
   農林水産省総合食糧局食糧部消費流通課流通加工対策室

大分県農協がJAS法違反に問われた事件